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原子炉格納容器(PCV)漏えい箇所調査装置の開発状況について [東芝]
(2014年5月16日)

2014年5月16日、IRID技術委員会「燃料デブリ取り出しに関する機器開発・遠隔技術に関する専門部会」のメンバーを中心に、原子炉格納容器(PCV)漏えい箇所調査装置の開発状況について視察を行いました。

今回視察したのは、IRID組合員である東芝と協力しているIHIが担当する装置で、その開発は横浜市磯子区にあるIHIの工場で行っています。

視察した装置は、次の4つです。

1.サプレッションチェンバー(S/C)下部外面調査装置(SC-ROV)

S/C下部外面の調査用。永久磁石(ネオジウム)により磁化した車輪でS/C表面に吸着し、主に水没部に直径30mm以上の穴があるかどうかを調査する自走式ロボット。福島第一原子力発電所第1、2、3号機用。ケーブルにより、電力・エアーの供給、通信を行っている。S/C下部外面を内周側から外周側へ移動しながら、カメラ(前方、後方、右方、左方)により損傷部の有無を確認する。同じところを繰り返し調査しないように、スティックタイプのマーキング機構が装備されており、目印を付けながら走査していくことができる。装置下部には車輪着脱機構が装備されており、これをジャッキアップすることで、S/C表面から離れることができる。

2.ドライウェル(D/W)とベント管の接合部調査装置(VT-ROV)

ベント管付根部の調査用。S/C下部外面調査装置の姉妹機であるが、左右のカメラ、マーキング機構がない。福島第一原子力発電所第1、2、3号機用。デブリアタック(溶融燃料デブリがD/W底部に落ちて広がり、D/Wシェルに損傷を与えること)等を想定したD/Wとベント管の接合部付近での水漏れの有無を確認する。ベント管とコンクリート壁の最少隙間約100mmにも入れるように高さは90mmに抑えられている。

3.サンドクッションドレン管調査装置(DL-ROV)

サンドクッションドレン管の調査用。3つのスラスターを搭載した小型水中遊泳装置。福島第一原子力発電所第2、3号機が対象。ドレン管の出口フランジに位置決めできる構造になっていて、ドレン管出口部にトレーサーを流し、その流れをカメラで観察することによりドレン管からの漏れの有無を調査する。

4.支援装置(遠隔マニピュレーター)

①~③の調査装置をマニピュレーターにより、トーラス室内の所定の場所に搬送するための装置。各号機の建屋1階床に8か所の穴をあけて、それぞれの穴の上にこの支援装置を設置し、穴から下に伸びる伸縮式マニピュレーターにより、①~③の装置の搬送作業や、回収作業を行う。装置はマニピュレーター本体、マニピュレーター制御装置(ケーブルマネージメント部)、駆動用油圧ポンプ、操作コントローラで構成され、その他、干渉物切断機能(ウォータジェット、シェア)や調査装置ケーブルリール機構を有している。今回はS/Cとベント管の実スケール試験体と共に見学。

なお、燃料デブリを「冠水工法」(参考:「冠水工法CG」https://irid.or.jp/video/)で取り出すにあたっては、現在、原子炉格納容器が損傷し水漏れを起こしている個所を修理する必要がありますが、これらの装置は、その損傷個所を見つけ出すためのものです。

今後、これらの装置を使って、工場内で試験を行っていくとともに、モックアップ設備を使ったトレーニングを継続していくことになります。2014年中には、これらの装置を福島第一原子力発電所へ投入する予定です。

【用語解説】
  • サプレッションチェンバー(S/C)
  • 圧力抑制室。原子炉の圧力容器の下部にあるドーナツ型の容器で水を貯蔵した設備。原子炉配管破断事故時に発生した蒸気を凝縮し、過大圧力を抑制する設備。また、炉心冷却水喪失事故時に緊急炉心冷却装置(ECCS)の水源の一部になる重要な部分。
  • ベント管
  • 原子炉配管破断事故時に発生した蒸気をD/WからS/Cへ導くための接続配管であり、福島第一原子力発電所第1~3号機の格納容器には各8本ずつ設置されている。
  • ドライウェル(D/W)
  • 原子炉格納容器のサプレッションチェンバー以外の部分。圧力容器等を格納するフラスコ型の容器で、事故時に放射性物質を閉じ込める安全設備。
  • サンドクッション
  • 事故時に原子炉格納容器(D/W基部)に生じる局部応力を緩和させる機能を有するもので、D/W底部の外側に砂を充填した部位を指す。
  • ドレン管
  • 一般的に不要な水を排出することをドレンというが、この場合上記サンドクッションにたまった水を排出する管を指す。

視察の様子

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【写真】

  • 調査概要説明時(IRID機器開発・遠隔操作専門部会メンバー、他)

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験視察

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験(上昇)

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験(上昇)

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)のS/C部分模擬体上での動作試験(下降して水中へ)

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)本体

  • ベント管の部分模擬体

  • VT-ROV(D/W-ベント管接合部調査装置)本体

  • SC-ROV(S/C下部外面調査装置)の操作画面

  • DL-ROV(サンドクッションドレン管調査装置)本体

  • DL-ROV(サンドクッションドレン管調査装置)本体前方部

  • DL-ROV(サンドクッションドレン管調査装置)本体上面

  • ベント管及びS/Cの実スケール模擬試験体(D/W側ベント管開口部)

  • 担当者による模擬試験体と調査対象箇所へのアクセス方法についての説明

  • ベント管及びS/Cの実スケール模擬試験体(ベント管とコンクリート開口部の隙間)

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)のアーム

  • ベント管及びS/Cの実スケール模擬試験体(ベント管とコンクリート開口部の隙間/中央部はベント管ベローズの保護カバーを模擬した構造)

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)のアーム先端部

  • ベント管及びS/Cの実スケール模擬試験体(D/W側から見たところ)

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)操作状況の視察

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)本体

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)(床のアクセス孔上部に設置された状態)

  • 支援装置(遠隔マニピュレータ装置)本体(手前:アーム格納フレーム、奥:ツール格納フレーム)

  • 淺間部会長による講評