①汚染水貯蓄

【現状】

汚染源である高濃度放射性物質(主として溶融燃料)が福島第一原発建屋内に存在しており、この冷却のために常時、水をかけ流しているのが現状(1日約400トン)。この水が、溶融燃料に触れることによって汚染水となり、加えて、格納容器に損傷があるため、建屋地下に流れ込む地下水(1日約400トン)と混ざり、汚染水となる。この計約800トンの汚染水をポンプでくみ上げ、セシウム除去装置及び淡水化装置による処理を行い、400トンをタンクに貯留し、残り400トンを再利用している。

貯留するタンクについては、いくつかのタイプがあり、ボルト締め型タンクからの汚染水漏えいが発生している。同型のタンクからの漏えいリスクを減らすため、溶接型タンクの増設(現状、発注から現場設置完了迄約6ヶ月、容量約1000ton/基、直径約12m、高さ約10m:写真参照)を最大限加速化し、全てのボルト締め型タンクを溶接型タンクにリプレイスすることとしている。加えて、リプレイスを行ったとしても、タンクや配管からの漏えいのリスクはゼロにはならないため、パトロールを強化するとともに、たとえ汚染水を貯留するタンク及びその配管から漏えいが発生したとしても、早期に対応して、周辺土壌等に汚染が拡大しないようにするため、タンクに水位計や漏えい検出装置等を設置することとしている。

溶接型タンク

溶接型タンク

【求める技術】

(1)溶接型タンクに求める要求事項

  • タンクのリプレイスを加速するため、部品納入&現地施工期間が現状と比較して短期間であること(目標:発注から現場設置まで約5ヶ月以内)
  • 汚染水(Cs137:104Bq/l オーダー、Sr90:108Bq/l オーダー)を貯留できること
  • タンク内面からの点検&補修せずに 10 年以上漏えいを防止できること
  • 有限の敷地内に効率的に貯留できる構造であること(標準:円筒鋼製 1000 トンタンク)
  • 相当程度(少なくとも 0.36G)以上の地震に対し漏えい防止機能を維持できること
  • 可能であれば、タンク内で発生する制動 X 線を抑制できる遮へい機能を有すること

(2)その他タンクに求める要求事項

  • 前述(1)以外の方法により大量の汚染水を長期安定的に貯蔵することのできる手法(タンク以外も含む)
    例)タンクの大型化、大深度スペースの活用、洋上タンカー 等
     (尚、洋上タンカーは港湾内に設置箇所の確保が困難であり、港湾外へ設置する際の要件 を調整する必要がある)
  • 地下水位の低下による地盤沈下にも対応できる手法であれば望ましい

(3)微小漏えいを検出できる技術
「パトロール時のβ線測定能力向上」

  • γ線雰囲気線量(1cm 線量当量率が約 50μSv/h)の影響を排除し、β線の表面汚染密度(Bq/cm²)を計測できること(β線検出性能:1.0×102~1.0×107Bq/cm² より広範囲)
  • 作業員が携帯し易いよう軽量であること(現有機器重量 10kg より大幅に軽量化を希望)

「タンクからの漏えい水の視認性向上」

  • タンク内の汚染水に着色し、タンク周辺水溜りの原因が雨水か漏えい水か容易に識別できること
  • 汚染水の放射性物質を除去する際に、支障とならないこと
  • 脱色でき、かつ環境への悪影響がないこと

(4)ボルト締め型タンクの撤去作業の円滑化

  • タンク水抜き後、タンク内壁面&底面に付着した放射性物質を速やかに除去できること
  • 作業時の被ばく線量を低減できること(作業時間短縮または遠隔操作)
  • 除去した放射性物質を含むフィルター等につき、長期的に保管管理できること