⑥地下水等の挙動把握

【現状】

地下水の流入抑制対策の検討にあたり、東京電力が保有するデータ及び解析結果を用いて敷地内の地下水流動の把握、対策の効果の検証等を行っているが、定量的に十分な正確性をもった検討を行う為には地質データ、地下水データが不足している状況にある。建屋周辺の地下水位、地下水の流動状況、水質等の把握は引き続き重要であり、観測網及びデータを拡充し、敷地内の地下水流動、原子炉建屋等への流入等の更に正確な解析を実施することが望ましい。

ただし、観測網の拡充にあたり、ボーリング掘削による観測孔の設置を行う場合、期間(約1週間/30m 孔程度)を要することや、現場に設置する観測孔の間隔にも限界があることから、十分なデータ量を入手する為には期間・リソース的に課題が多く存在する。この為、ボーリング以外に簡易に地質データ(地質構造・透水性等)、地下水データ(水位、水圧、流速等)を計測できる技術が求められる。

また、汚染水の拡散状況の把握を目的として、建屋海側の汚染エリア付近、漏えいが発生したタンクエリア付近及び海域へ流入する可能性のある経路に対し、定期的にモニタリング(全β、ストロンチウム、トリチウム等)を実施している。
水質の調査は、測定ポイントの水を採取した後、構内の分析設備において全β、ストロンチウム、トリチウムなどの濃度(Bq/L)を分析しているが、採取日から分析結果が出るまでに期日を要するのが現状である。(注1参照)

これら水質の調査結果については対外的にもタイムリーで正確な情報提供が求められるものであり、迅速に測定・分析する技術を必要としている。

注1)
 現状、分析員が試料を受け取ってから、結果が出るまでの所要時間は以下のとおり。
 ただし、試料採取場所、採取試料数によって分析室まで持参する時間は大きく変動する。

① 全β:約1時間30分(試料準備5分、乾燥60分、計測5分、評価20分)
 10mlの試料を2πガスフロー計数装置で測定。
 全βの検出限界値は20Bq/L 程度。

② トリチウム:約27時間
 (試料準備5分、蒸留2時間、シンチレータ混合24時間、測定40分、評価20分)
 6mlの試料を液体シンチレーションカウンタで測定。

③ ストロンチウム
 これまではaの手法を採用していたが、分析時間の短縮を目指し、現状は一部bの手法を
 採用しており、今後はcの手法を用いることに取り組む予定としている。

  1. 2000ml の試料を発煙硝酸法にて前処理、2πガスフロー計数装置で測定:約24日間(ストロンチウムからイットリウム生成20日、イットリウムを分離・測定・評価4日)
    ストロンチウムの検出限界値は0.1Bq/L 程度。
  2. 2000ml の試料を発煙硝酸法にて前処理、ピコベータで測定:約7日間
    (妨害核種除去、炭酸ストロンチウム沈殿物作成6日、測定・評価1日) ストロンチウムの検出限界値は0.8Bq/L 程度
  3. 2000ml の試料をイオン交換法にて前処理、ピコベータで測定:約4日間 (ストロンチウム抽出2日、炭酸ストロンチウム沈殿物作成0.5日、測定・評価1日)
    ストロンチウムの検出限界値は0.8Bq/L 程度

【求める技術】

(1)地下水の挙動把握の為に必要なデータ収集の手法 (地質・地下水データの計測システム等)

  • 対象データ:
    地質構造、透水性、地下水位、地下水圧、地下水流速
  • ボーリング以外に簡易に計測等ができる手法、または無人にてボーリングできる装置

(2)水質の分析技術

  • サンプリング水に含まれる放射性物質濃度(分析対象:トリチウム、ストロンチウム)を数時間
    で測定できること
  • サンプリング装置の取扱いが簡易であること
  • サンプリング装置は、敷地から持ち出し困難であるため、現地で簡易にメンテナンスできるこ

(3)観測孔設置技術

  • 作業工数(現場作業員数*作業時間)が少ないこと(10 人・日/30m 孔以内)
  • 観測孔内のサンプリング水に、周辺土壌からの汚染物混入を防止できること