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宇宙線ミュオンによる炉内の燃料位置調査に向けて、福島第一原子力発電所で測定システム設計のための準備試験を実施しました

2014年8月20日

IRIDではこのほど、福島第一原子力発電所において、「ミュオン透過法」の測定システムを設計するための準備試験を実施しましたのでお知らせします。

 

福島第一原子力発電所1~3号機では、燃料が溶け落ちているとみられています。
廃炉の最も重要なステップは、これらの燃料を取り出すことですが、そのためにはまず、どこにどのような形で燃料が存在しているか把握することが欠かせません。しかし、現場は依然として放射線量が高く調査は困難を極めています。
そこで期待されているのが、宇宙から降り注ぐミュー粒子(ミュオン)によって原子炉を透視する技術です。基本的な原理はレントゲンと同じで、ミュオンが密度の高い物質を通り抜けた後の粒子の数や軌跡から、燃料の位置や形状を把握できる仕組みです。
ミュオン透過法は、これまで火山内部の構造把握(マグマ、空洞等)に活用されてきたほか、日本原電株式会社東海発電所2号機で行われた透過試験でも一定の成果が得られています。

この度の準備試験は、平成26年7月25日~27日の3日間かけて行いました。
具体的には、遮へいの厚さが異なる鉄製の箱(厚さ:5cm、10cm、15cm)にミュオン測定器を納めて、どれだけの厚さがあれば、周囲のガンマ線の影響を受けることなく、ミュオン透過法の効果が保てるのか確認しました。
その結果、5cmの遮へい厚ではガンマ線による影響が顕著に表れてしまったものの、10cm以上の遮へいがあればその性能に問題は無いことが確認できました。

今回得られた結果に基づき実機の遮へい体を製作し、平成26年度下期には、実際に福島第一原子力発電所1号機にてミュオン透過法による測定を実施する計画です。そこで得られた測定データを解析して、原子炉内に残っている燃料デブリの位置・量を評価していきます。

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トラック荷台に設置されたコンテナで試験実施

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試験装置一式(手前の鉄製箱内に測定器設置)

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